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お絵かき&雑記
『あなたにしか見せない』
2010-01-14 Thu 02:39
SS『あなたにしか見せない』

聖高校1年次
聖視点/聖×SRG
前にUPしたマンガの切れ端の続き…というか何と言うかSSです。

☆ ☆ ☆


「面白いものが、見られるわよ。」
そう言われて、紅薔薇のつぼみにほぼ強制的に引っ張っていかれたのは、放課後。
連れて行かれた先は、なんてことはない中庭だった。

「何ですか?面白いものって?」
「ここに居れば、わかるわ。」

木の茂みの影。
紅薔薇のつぼみは、何が楽しいのかニヤニヤしながらその影にしゃがみこむと「ほら、あなたも。」と私の腕をひく。どうしてわざわざ、こんな所で紅薔薇のつぼみと2人で過ごさなければならないのか。私は溜息を一つつき、仕方なくその場にしゃがむ。



「来た。」
しばらくして、紅薔薇のつぼみが小さく呟く。
目を向けると、私のお姉さまである白薔薇のつぼみが数人の取り巻きに囲まれながら歩いている。薔薇の館にでも向かうのだろうか。お姉さまはニコニコと、周りの生徒たちに愛想を振りまいている。私には見せない表情。

お姉さまの姿を目で追っていると、隣からクスクスと小さな笑い声が聞こえた。お姉さまに気を取られて紅薔薇のつぼみの存在をすっかり忘れていた。

「…それで、何が面白いんですか?」
私は紅薔薇のつぼみに向かって小声で言った。
「面白いわよ?」
「だから、どこが面白いんです?」
「あなたの今の顔、面白い。ちゃんと焼きもち妬くのね。」
「焼きもちなんて…」
「いいじゃない。いつものシレッとした顔のあなたより、ずっと好感が持てるわ。」
紅薔薇のつぼみはニヤニヤしながら言う。私は紅薔薇のつぼみの言い方と表情に腹が立った。人が悪いにも程がある。それに、含みを持った言い方は蓉子そっくりだ。

「失礼します。」
紅薔薇のつぼみの方を見ずに言い放つ。しかし、紅薔薇のつぼみは私の手を掴んで離してはくれなかった。
「ダメよ。これからがメインイベントなんだから。」
「メインイベント?」
私が繰り返すと、紅薔薇のつぼみはキレイに晴れた今日の空のようないい笑顔を浮かべる。
「そ。あなたには特等席で見せてあげるから。」
「え?」
意味がわからず、私の眉間に皺が寄る。対する紅薔薇のつぼみはサッと右手を上げて掌をゆらゆらと揺らして一言。
「行ってらっしゃ?い」
そして“どこへ?”というたった3文字を言うよりも先に、私の背中は押されていた。

「なっ!?」
思い切り押されてバランスを崩した私は、目の前の薄い茂みを突っ切ってヨロヨロと道の中程まで出てしまった。目の前にはお姉さまと取り巻きの一団。突然の事に目を丸くして私を見ている。辺りはシーンと静まり返り、気まずくて声も出ない。僅か数秒のその沈黙が一時間にも思える。そんな空間を簡単にブチ破ったのは、お姉さまの豪快な笑い声。
「プッ…ハハハ、アハハハハ…」
お姉さまはお腹を抱えて笑う。お姉さまにつられたように取り巻きたちの間にもクスクスと笑い声。
「ハハハ…、ごきげんよう、聖。」
お姉さまは笑いすぎて潤んだ目をこすりながら言う。
「ご、ごきげんよう…」
少し不機嫌に私が答えると、お姉さまはそっと私に近づいて私の髪に触れる。
「頭に葉っぱなんて乗せて、変身でもするつもり?フフフ。」
言いながら、髪に絡んだ枯葉をスルリと解くと、私の掌にその枯葉をのせた。
あなたにしか

そうして、今まで連れ立っていた4?5人ほどの生徒たちに「皆さん、ありがとう。ごきげんよう。」と笑顔でご挨拶を済ます。
「え?」とか「白薔薇のつぼみ」などと名残惜しそうに、口々に呟く生徒たちを尻目に、お姉さまは「行きましょう。」と私の手を掴んで何の躊躇も無くその場から離れてしまった。

◇ ◇ ◇

「あの、良かったんですか?」
「何?」
「さっきの。」
チラリと後ろに視線を向ける。お姉さまは私の視線の動きを追って、少しだけ後ろを向くと、抑揚の無い声で「あぁ、別に。いいんじゃない?」と言いながら、軽く手を振った。数人の「キャー」という声が遠くに聞こえる。

「これを届けに来てくれたのよ。・・・調理実習で作ったらしいわ。」
「ほら。」と言いながら、私の口にクッキーを一枚放り込む。しっとりしていて中々おいしい。口の中のクッキーを飲み込みながら横目でお姉さまの顔を見ると、何だか嬉しそうな顔。
「それにしては、ニコニコしてらっしゃいますね。」
皮肉のつもりではなく、それが私の素直な感想。
けれど…
「妬いているの?」
お姉さまは、軽く笑いながら言う。
「そんなんじゃ、ないです。」
プイと顔を背ける。
「違うの?焼きもちを妬いて、あんな所から出てきたのかと思ったのにな。」
思い出し笑いを浮かべながらお姉さまは言う。
「別に、私は…」
「別に聖は、私が誰と何をしていようがどうでもいい?」
「それは…」
確かに、見ていて“面白いもの”では無かったけれど。お姉さまが誰と仲良くしようが私には関係がない事。それに、いくらスールといえども、私が口を出せることではないし。私とお姉さまは、そのような束縛をする姉妹ではない。

「フフ。」
笑い声に顔を上げると、「困らせてしまった?」と私の頭を撫でながらお姉さまは言った。
何だか心を見透かされているようで、私は何も答えなかったけれど、お姉さまは弾んだ声で「でも、ちょっと嬉しい。」と言ってニヘラっと笑う。それはあまりにも気が抜けたような、子供みたいな無防備な笑顔。
「お姉さま、顔、緩んでますよ。」
ボソリと呟くと、お姉さまは呆れたというように笑った。
「…バカねえ。妹の前で、表情作ってどうするのよ。」
「…。」
それは“私は特別”と解釈していいのだろうか?そんな事を思いながらお姉さまの顔を窺い見る。
「なぁに?不満?」
目が合ったお姉さまは、首を傾げる。
「いえ、そんな事は。」
慌てて首を振る。

◇ ◇ ◇

「何だか疲れちゃった。慣れない事はするものではないわね。」
「慣れない事なんですか?」
「そうよ。こういうのは紅薔薇のつぼみの担当だし。…私、案外人見知りなのよ?」
鼻歌でも歌うように言う言葉には、信憑性の欠片も無かったけれど、本人がそう言うのだから信じるほかはない。そうは思いながらも「そうは見えませんけれど?」と返すと、お姉さまは「そう見えないように頑張ったもの。」などと、まったく身も蓋もない事をサラッと言ってのける。

「ね、頑張った私にご褒美を頂戴?」
子供みたいに目を輝かせて言うお姉さま。
「ご褒美ですか?…それなら、お姉さまの手の中にあるじゃないですか。」
お姉さまの右手にかかっている小さい紙袋の中には、先程の生徒たちが作ったクッキーが入っている。彼女たちのお相手をしたご褒美が欲しいというなら、これで十分なはず。
「クッキー?これもいいけれど…私、聖が入れた紅茶が飲みたいわ。」
ご褒美というから、何かとんでもないものを言われるのかと思ったけれど。
「そんなものでいいのなら。」
私は即答した。するとお姉さまは「本当?」と言って本当に嬉しそうな顔でニッコリと微笑んだ。その顔を見て、私は紅薔薇のつぼみの言葉を思い出す。
“―あなたには特等席で見せてあげるから。”

(あぁ・・・確かに、特等席かもしれない)


そう思いながら、
私はいつもは少し前を歩くお姉さまと、今日は並んで薔薇の館までの道をゆっくりと歩く。
時折、私だけの特等席からお姉さまの顔眺めて。



2010/01/14 UP
『あなたにしか見せない』

★ ★ ★ ★ ★
あとがき

でも、本当に特等席にいるのはSRG
…てか、一部始終を草むらから見ているSRCかな。

去年の秋に書いた話。
だから中に入っている絵も古くて。
少し描き直ししたんだけど、余計に汚くなっちったなぁ…

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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この記事のコメント
ああ、お姉さま
モテるのは白薔薇の伝統ですね。それにしても聖さま。やっぱり聖さまは究極の妹キャラですな。聖さまって、姉には向いていないのかも。やっぱり。(下級生にモテまくるのはスター性として)しっかりした人と一緒にいるのが聖さまにとっていい環境なのかも。
2010-01-15 Fri 07:58 | URL | ナザレス #-[ 内容変更] | top↑
ナザレスさま

コメントありがとうございます。
聖さまは最強の妹属性(←日本語変ですが)だと、信じてます。志摩子さんのお姉さまキャラも、それはそれで素敵ですけどね。
…でも、逆に最強のお姉さまと言われる蓉子さまが妹としていじられてるのも好きです。
原作の「Answer」とか。

お名前さま
拍手コメントありがとうございます。
バッテンお口…拍手のお礼絵ですね。
自分で載っけといて、一瞬忘れてました(0_0;)
あの頃は、あーゆう感じが好きだったみたい。。。
2010-01-18 Mon 22:02 | URL | よぉっし #-[ 内容変更] | top↑
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