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お絵かき&雑記
『“好きな人の好きな人”を好きになるとは限らない』前編
2010-07-12 Mon 00:32
SS『“好きな人の好きな人”を好きになるとは限らない』前編

聖、高校2年梅雨あたり?
SRC視点/SRC×聖

☆ ☆ ☆

梅雨は嫌い。
ジメジメと湿気を帯びた空気が体中にへばりつくようで、身体ばかりか気持ちも重くなる。

空は今にも雨粒が落ちてきそうな、つかの間の曇り。朝からの雨で濡れたアスファルトは、所々に水溜りを作り、そこを歩く者の足元を静かに狙う。
そう、今の私がまさにその被害者の一人。注意深く足元を見ながら、帰路に向かった。が、道一杯に広がる水溜りを前に、私はあまりにも無力だった。
歩くたびにビチャビチャと不快な音をたてる足を引きずり、辿り着いたのは薔薇の館。今日は会議はないけれど、このままの姿で満員のバスに乗る気がしなかった。紅茶で温まって、気休め程度でも靴下と靴を乾かす。その間にバスもラッシュを過ぎるだろう。



シュンシュンというお湯の沸く音。
1人分の茶葉を出し、ゆっくりポットにお湯を注ぐ。すぐにキレイな琥珀色がポットの中に広がる。そういえば、薔薇の館で自分でお茶を入れるのは久しぶり。いつもは蓉子か江利子ちゃんが用意してくれる。2人とも、何でもソツなくこなすいわゆる優等生だ。あの2人が“薔薇様”を継いでくれるなら、私たちが卒業しても山百合会は安泰だろう。
―たとえ、三薔薇と呼ばれるその中に問題児が1人紛れ込んでいたとしても…
私はふと、いつも不機嫌そうな顔で蓉子に追い回されている彼女の姿を思い出す。

すると、まるで私の思考にリンクするように、ギシギシギシと聞きなれないリズムで階段が軋む。次の瞬間、扉を開けたのは白薔薇のつぼみ、佐藤聖。
相変わらずの不機嫌そうな顔。
でも、その無愛想な顔でも絵になってしまうのだから悔しい。

「あら聖ちゃん、ごきげんよう。」
「…ごきげんよう。ロサ・キネンシス。」

佐藤聖は、私の挨拶に目を向ける事もなく、キョロキョロと室内に目で探っている。
探しているのは、多分…
「何?白薔薇さま?」
「…今日はお姉さま、いらっしゃらないんですか?」
「今日は来ないわよ。用事があるって今朝言っていたから。」
「そう…ですか。」

佐藤聖の表情には明らかに落胆の色。
「へぇ…そんな顔もするのね」などと、思わず心の中で呟く。
不機嫌以外の顔を見るのは、はじめてかもしれない。

“聖は表情豊かなのよ。”
以前、白薔薇さまが言っていた言葉が頭によみがえる。
あの時は、黄薔薇さまともども一笑にふしたけれど…


「入ったら?」
ドアを開けたきり、入室してこない佐藤聖に声をかける。返ってくる答えは予想がつくけれど。恐らく「帰る」と言うだろう。そして、普段の私ならば特別引き止めることもしない。私は私の周りの“彼女たち”と違って、それほど佐藤聖が好きではないから。しかし、今は状況が違う。私は今、非常に退屈なのだ。1年間も同じ組織に属していながらほとんど話した事もない下級生…靴が乾くまでの暇つぶしにからかうにはちょうどいいと思った。

私は折角現れた話し相手を逃がさないように、まだ濡れている靴を引っ掛けてドアに向かい、「お茶をご一緒しましょう。」と佐藤聖の背を押す。

「いえ。私はここで失礼します。」
佐藤聖は少し顔を強張らせ、今閉めたばかりの扉を少し開けて予想通りの言葉を吐いた。私は心の中で「ほらね。」と呆れ半分に溜息をつく。

「どうして?何か用事?」
「…いえ、別に。」
「それなら、ご一緒しましょうよ。それとも、私と一緒は嫌かしら?」
顔を傾けて上目使いに佐藤聖と視線を合わせて、逃げ場のない言葉をぶつける。これは、子供の頃から委員長を続けてきた私の必殺技。どんな問題児でも、この技を使えば7?8割は折れる。
「…そういう訳では、ないですけれど。」
「じゃあ入って。お茶を一杯だけ、付き合ってちょうだい。」
一気に畳み掛ける私に、佐藤聖は「…はい。」と溜息でも漏れそうな顔で渋々と頷くと、ビスケットによく似た扉を再び閉めてゆっくりとこちらに歩いてきた。


私が元居た席に腰掛けると、佐藤聖は給仕場に並んでいるカップを1つ手に取り、棚からインスタントコーヒーのビンを取り出し、蓋を開けると、その顆粒をカップにザッザッと2振り分入れてビンの蓋を閉めた。
そして、棚の定位置にビンを戻しかけて、その手が止まった。コーヒーの顆粒の量が少なかったんだろうか?随分多く入ったように見えたけれど…などと思いながら注目していると、佐藤聖は聞こえるか聞こえないかの声でボソッと言った。「飲みますか?」と。
どうやら私の視線に気付いていたらしい。

「いいえ、結構よ。さっき自分で入れたから。」
私がそう言うと、一時停止していた手が再び動き出し、ビンを中に入れ棚の戸を閉め、ポットのお湯をカップに注いで、私から少し離れた席のイスを引いた。

「他に誰も居ないのに、どうして離れた所に座るの?」
「他に誰も居ないのに、どうしてわざわざくっついて座らなければならないんです?」
私の言葉を受けて、チラッと私の方に目を向けて言い返す。
「可愛くないなぁ…」と思ったが、これも予想通りの反応。佐藤聖は蓉子や江利子ちゃんと違って、ひねくれてはいるが非常にわかりやすい。表現はおかしいがあえて言うならば、“素直なひねくれ者”だと言える。だから、行動予測もとてもしやすい。特に“本物のひねくれ者”と十数年机を並べてきた私にとっては、どうという事でもない。

「どうしても何も、離れていたら話しづらいじゃない。」
言いながら、私は佐藤聖の斜め前のイスを引き座りなおす。
佐藤聖はまたまた予想通り、「お話するような事、特にありませんよ。」と嫌そうな顔をして私が座ったイスと反対方向に身体を向けた。
「あなたがなくても、私はあるわ。私はあなたに興味があるもの。」
私がそう言うと、佐藤聖は多分相当苦いであろうコーヒーを一口クチに含み、多分コーヒーのせいではないであろう苦い顔をして私の方に顔を向けた。
「…何ですか?」
その顔を見て、私はニッコリ微笑む。


続き

--2010/07/12

★ ★ ★
あとがき

SS、超超久しぶりにUP!
今更、需要があるのか?果たして読んでくれる人が居るのか??
…わかんないけれど、書いた分だけUP
1回で終るはずだったけれど、時間がなくなってしまった><;
「聖 VS SRC」と「蓉子 VS SRG」の図式って結構好きなんです。

もし、読んでくれる人が居るとしたら、続きは期待しないで待っててください☆

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
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この記事のコメント
婿と姑でしょうか。
SRCにしてみれば、大事な妹がなんでこんなひねくれ物と…。
聖さまにしてみれば、おせっかいな蓉子のお姉さま…正直勘弁。

SRG&蓉子は、とっても仲が良さそうなのに。

2010-07-25 Sun 13:14 | URL | ナザレス #-[ 内容変更] | top↑
ナザレスさま

コメントありがとうございます。

SRCと聖さんは、なんとなく相性が悪そうだなぁ~って思って書いてみました。なんと言ってもあの蓉子様のお姉さまですもんね☆多分、水と油だったんじゃないかな?(妄想)

2010-08-01 Sun 17:25 | URL | よぉっし #-[ 内容変更] | top↑
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