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お絵かき&雑記
『“好きな人の好きな人”を好きになるとは限らない』後編
2010-08-02 Mon 00:21
SS『“好きな人の好きな人”を好きになるとは限らない』後編

聖、高校2年梅雨あたり?
SRC視点/SRC×聖

前編

☆ ☆ ☆

「私ね、あなたの事よく知らないから。」
「は?」
「興味があるのよ。あなたがどんな人間なのか。」
私の言葉に、佐藤聖は訝しげな表情を浮かべる。
私は、その表情に満足しながら、言葉を続ける。

「ねぇ、あなたってどんな人?」
「…。」
佐藤聖は、眉間に皺を寄せて私から目を逸らす。
“構わないでオーラ全開”
けれど、そんなもの私には通じない。
「あら、困っている?」
私は意気揚々と問いかける。


「…自分の事、どんな人か聞かれてすんなり答えられる人なんて、そうは居ないと思いますけれど?」
不機嫌顔を隠すこともせずに、佐藤聖が面倒くさそうに呟いた。

例えば、もう少し位萎縮していたら、可愛げもあるのに。
折角だから、もう少し困らせてやろう。
「私は答えられるわよ?」
「…。」
私の言葉を受けても、佐藤聖は変わらず苦い顔で黙りこくっている。

この席に蓉子か白薔薇さまが居たら…慌てて私の口を塞いでいただろう。
白薔薇さまは言うに及ばず、蓉子だって何だかんだ言って結局は佐藤聖に甘すぎるもの。けれど、私は違う。あとで佐藤聖に疎まれようが嫌われようが、痛くもかゆくもない。だから、口の端が意地悪くつりあがるのも構わずに佐藤聖に言葉を向ける。
「蓉子もすんなり答えると思うけれど?」

彫刻みたいに整った顔が、「蓉子」という言葉に反応するようにピクリと動いたのがわかった。それは些細な変化だったけれど、私にとっては興味深い意味を持つ変化で、見逃すわけもない。

「蓉子ならきっと、私より上手に応えるんでしょうね。」
ニッコリ微笑みながら言うと、佐藤聖は何かを考えている様子で少し下を向いている。
私への反撃でも考えているのだろうか?だとしたら楽しみなのだけれど。
少しの沈黙を待って、私は再び言葉を向ける。
「聖ちゃんは、どう?」

「…蓉子が…特殊なんだと思いますけれど?」
そう応える佐藤聖の顔は、既にいつもの不機嫌顔に戻っている。
「そうかしら?」
「多分。」
そう一言だけ応えて、毒々しい色のコーヒーを口に運んでいる。

「江利子ちゃんなら、どうかしらね?」
私は佐藤聖の顔に注目しながら、言葉を選ぶ。
「さぁ?それなりに応えるんじゃないですか?」
今度は反応しなかった。残念。
どの言葉なら反応するか。なんだか、リトマス紙の反応実験みたいで面白い。
「蓉子」では反応して、「私」や「江利子ちゃん」だと反応しない。
この法則は何だろう?どんな言葉を向ければ、佐藤聖は反応するだろうか?
私は頭の中で、山百合会のメンバーの顔を次々に思い浮かべてみた。
そして、辿り着いたのは…


「あなたのお姉さま…白薔薇さまなら、あっさり応えそうね。」
そう私が言った時、佐藤聖の表情が「蓉子」の時よりも顕著に変わった。
やっぱり、私の睨んだ通り。
さて、どんな言葉が返ってくるだろうか?
顔に出さないように、ワクワクしながら佐藤聖に目を向ける。すると佐藤聖はカップを手に取り、まだ熱いはずのコーヒーを一気に口に含みゴクゴクと喉に通している。時間稼ぎだろうか?
私はテーブルに肘をつき、その様子を黙って見守る。
佐藤聖はカップの中身を飲み干すと、「ケホッ」と1つ咳をしてから私の方に目を向けた。
「…私はお姉さまと違って、山百合会にふさわしくない人間ですから。」
そう呟くと、カップを持って席を立った。

「気を悪くした?」
やりすぎてしまっただろうか…
さすがに不安になり、慌てて声をかけると「いいえ。」といつもの不機嫌顔で応える。
いつもの不機嫌顔だから本当は怒っているのか、それとも怒っていないのか私には判断がつかなかった。
「じゃあ、座って。」という私の言葉に、佐藤聖が返した言葉は「約束でした。」だった。
一瞬、意味がわからずに戸惑う私を尻目に佐藤聖はさっさと給仕場に向かう。
やっぱり怒っているのだろうか?
私は黙って佐藤聖の動きを目で追う。その視線に気が付いたのだろうか、佐藤聖は私に目を向ける事無く独り言のように「“お茶、一杯”お付き合いするお約束でした。」と言いながら手早くカップを洗って食器置き場に戻すと、さっさとカバンを持ち、「失礼します。」と一言。


もう少し話したかったけれど、約束を持ち出したのは私。
「私の靴が乾くまで」という条件を出せばよかった…などと思いながらドアに向かう佐藤聖を目で追う。
これで、またしばらく佐藤聖がここに来る事はないだろう。
来たとしても、私と話す事は多分ない。実際、去年1年間同じ組織に属していながらほとんど話した事がないのだから、測らずとも実証済みだ。
しかし、それならば私は今、ここで佐藤聖に1つ言っておかなければいけない事がある。

「待って。」
「…。」
ドアノブに手をかけたまま、佐藤聖はその場に静止する。

「さっきの話だけれど、あれね、うそよ。」
私が言葉を発すると、佐藤聖はドアノブは、しっかり握ったまま、顔だけをこちらに向けた。
「私だって、自分がどんな人間かなんてすんなり答えられないわ。面接試験とかなら話は別だけれど。多分、蓉子も白薔薇さまもね。」
言葉を続ける私に、彫刻のような顔を崩すことなく、また声を発することもなく、ただ顔だけをこちらに向けている。その目はまるでビー玉みたいで感情が読み取れず、何を考えているのか予想しかねる。

「どうして、そんな話?」
静かな部屋にポソッと放られた言葉。
「だって、今度いつあなたとお話できるかわからないでしょう。嘘を言ったままでは気持ちが悪いわ。」
私は放られた言葉にストレートを返す。
「悪かったわね。別にあなたの自尊心を傷付けようと思ったわけではないの。からかってやろうとは思ったけれど。」
本音をチクリと混ぜて言うと、佐藤聖はガラにもなく呆れた顔。
その気の抜けたような顔が妙に可愛らしく見えて、私は思わず佐藤聖に背中を向けるように席を立ち、そのまま窓際の方へ数歩進む。
窓の外は鉛色の雲が空を覆い、ここに来た時と同じように薄暗い無彩色。

「でも、あなたがどんな人間か興味があるのは本当よ。」
そのまま、薄暗い空を見上げながら言う。私にしては珍しく、相手の顔を見て言葉を放らなかったのは、多分、佐藤聖がたまに見せる無防備な表情が思いのほか可愛かったからではなく、ポツリポツリと音を立て始めた雨粒の様子が気になったためだと、自分に言い訳をしてみる。


「それは、私が“白薔薇のつぼみ”だからですか?」
そんな私の背中にぶつかる佐藤聖の問い。
「いいえ。違う。」
「じゃあ、どうして?」
「それは―…」
言葉の途中で、目の端に違和感をキャッチした。窓の外、無彩色の中に1つの彩色。
赤い傘がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

「ひねくれものの友達が妹にした子で、ウチの生真面目な妹が追っかけまわしている子だから…かな。」
「…。」
「気になるじゃない?自分の周りの人間が惹かれている人間がどんな子か。」
私は思っている通りの本心を告げたが、佐藤聖はご不満の様子で不機嫌な顔を私に向けている。
「別に、惹かれているとかじゃ…ないと思いますけれど。」
「そうかしら?私の目には、そうとしか映らなかったけれど?」
「それでも、私はそうは思いません。」
そう言い切って、佐藤聖は改めてドアノブを回した。
ギギ…と鈍い音を立てながら、ビスケットに良く似た扉が少しずつ開く。

「待って。」
「まだ、何か?」
多少イラだった様子で佐藤聖は横目で私を見る。
「外、雨が降っているわ。あなた、傘は?」
「いえ。」
「じゃあコレ、持って行きなさい。」
そう言って、私はカバンから折り畳み傘を出し、差し出す。
しかし、佐藤聖は手を伸ばすどころかこちらに歩いてくる事もしない。
「折り畳み傘がカバンに入っているのを忘れて、大きな傘を持ってきてしまったの。だから、気にしなくていいわ。」
「…。」
言葉に出してなくても、明らかに嫌そうな顔。
白薔薇さまの言うとおり佐藤聖は、案外本当に表情が読みやすいのかもしれない。
もっとも、今の所、私に判断できるのは「嫌」か「凄く嫌」かの2つだけだけれど。

「嫌ならもう一杯お茶に付き合いなさい。蓉子も来たみたいだし。」
「…お借りします。」
不貞腐れたように傘を受け取り、さっさと扉の外に消える佐藤聖の背を見送りながら、私は一人ボソッと呟いた「まるで猫みたい。」と。

自分にかけられている愛情をまったく気にかけることなく、扱いが難しくて、そのくせ人の心を惹きつける…



ギシ、ギシと階段を踏みしめる音。
その音が止まり、ボソボソと2人分の話声。
そして、すぐにギシ、ギシ、ギシと階段が軋む音が遠くなっていく。
どうやら蓉子は振られてしまったみたい。




「ごきげんよう、お姉さま。」
しばらくしてビスケットに良く似た扉を開けた蓉子は、いつもよりほんの少し上機嫌だった。理由はわかっている。

「お姉さま、今、聖とすれ違いましたけれど…」
「ええ、お茶を一杯だけ付き合ってもらったの。」

「あ、どんなお話をされたんですか?」
いつも賢く冷静で抜け目ない蓉子が、こんなに前面に“興味津々”を押し出してくるのも珍しい。珍しすぎてついつい構いたくなってしまう。

「…蓉子の話。」
「え?」
「聖ちゃんがね、蓉子は特殊だって言っていたわよ。」
「あの…それはどういう意味ですか?」
「さぁね。特別って事かしらね。」
「特別…ですか。」

私の言葉を聞いた蓉子は「あ、今、お茶の用意しますね。」と普段と変わらない様子。
仕草もいつもどおり、適切かつ無駄がない。
正直、つまらないと思ったけれど、振り向いた顔を見てその考えは変わり、思わず溜息をつく。


“嬉しさを口元で我慢しています”という顔で、そそくさとお茶の用意を始める生真面目な妹の背を眺めながら、私は心の中で呟いた。

「まったく、あなたも厄介な人に惹かれたものね。」と。


--end

『“好きな人の好きな人”を好きになるとは限らない』後編
2010/08/01 up

★ ★ ★
あとがき

SRCとやさぐれ聖さまって、水と油って思うんですよね。
私の妄想ですが…

この後、もうちょっとだけ続きを考えてたんですが、それはまた今度機会があればupしたいなって思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました!
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この記事のコメント
果たしてSRCは、遺言として
「蓉子のこと、お願いね」と聖さまに言ったのでしょうか?
SRCの嫉妬で乙女分倍増。よけいに可愛く見えます。
また祥子も、姉の気持ちに気づいてるんでしょう。聖さまって、紅薔薇ファミリーの脅威になってますね。
それにしても… SRFは何処に?



…ところで話は変わりますが。
夏コミで、遂に出るみたいですよ。
【ドム御一行】さんの【Fragile】完成版。
SRGX聖のファンなら絶対に抑えておくべきです。
(何を言ってるのか分からなかったりしたらゴメンナサイ。)
2010-08-06 Fri 01:53 | URL | ナザレス #-[ 内容変更] | top↑
ナザレスさま

コメントありがとうございます。
>「蓉子のこと、お願いね」と聖さまに言ったのでしょうか?
私は言わなかったと思います☆
蓉子さま最強だし。

>SRFは何処に?
SRF?…ハッ!忘れてた…。

>【ドム御一行】さんの【Fragile】完成版。
>SRGX聖のファンなら絶対に抑えておくべきです。

そうなんですか~。
コミケは、噂は聞いた事ありますが行った事ないので。けど、SRG×聖ファン必見なら、相当興味深いですね。ナザレスさんは行かれるんですか?いいなぁ。
水分と塩分補給に気をつけて、楽しんできてください♪

2010-08-13 Fri 00:48 | URL | よぉっし #-[ 内容変更] | top↑
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